【 専門病院とは:開放病棟、集団療法、家族療法、仲間から学ぶ 】            

赤城高原ホスピタル(改訂: 00/12/12)


【 ア ル コ ー ル 専 門 病 院 と は 】

原則として任意入院形式、開放病棟。

アルコール症患者のためのプログラムがある。

教育プログラム、集団療法がある。

病院内で自助グループとの接触が多い。

入院中に病院外の自助グループに参加できる。

アルコール関連身体疾患に対応できる。

酒害者家族の相談、治療、入院に対応できる。

家族のための集団療法、治療プログラムがある。

付随した家族問題、家庭内暴力などに対応できる。

合併しやすい薬物問題、摂食障害などに対応できる。

アダルトチルドレン症候群の予防や治療が可能。

患者の自治会がある。

 妻と2人の娘の愛情のこもった説得を受けて、しぶしぶアルコール専門病院に入院することになったNさん(35歳)は、以前、肝臓病と酔って転倒した怪我で、一般病院には数回入院したことがあったが、専門病院は初めて。閉鎖的な恐ろしい場所を想像して不安になった。

 実際には、家族のおかげで入院時にしらふだったNさんは、最初から開放病棟に入った。現在は、アルコール専門病棟は任意入院で開放治療が原則。酔っていたり、意識障害があったり、幻覚や妄想を伴っていたり、自分や他人を傷つける危険があるような場合以外は、閉鎖病棟に入ることは一般にはない、と入院後に先輩患者から教えられた。

 入院するとすぐに、身体的な検査や点滴治療などが始まるが、ここでは同時に、患者自治会の役員の紹介があり、先輩患者たちから、ありとあらゆる助言を受けた。治療プログラムの中心は集団療法。毎日3回、多種多様なミーティングがある。そのため、入院中のほとんどの患者と顔見知りになる。驚いたことに、「酒はもう絶対に飲みません」と仲間に誓って退院していった患者が、その翌日に泥酔状態で、再入院になった。しかも、病院に戻ってくるのはまだ良い方で、退院して 1年以内に死ぬ患者も多い。Nさんの入院中にも、退院患者が2人亡くなったが、そのうちの1人は、たまたま昔の飲み仲間だった。酒のために仕事も家庭も失った人や、廃人に近い状態の患者もいた。酒で全てを失っていながら、「退院したら控えめに飲む」と言っている仲間もいた。それに対し、医者も看護スタッフも、「酒をやめろ」とは言わない。その選択は本人が決める事だからだ。しかし、飲み始めた依存症患者の末路は、専門病院にいれば、嫌でも体験的に知ることになる。

 Nさんにも自分と酒との関係がだんだんみえるようになった。酒をやめ続け、しらふの人生を楽しんでいる人が多数いることも分かった。というのは、依存症患者は、入院中から院外の自助グループに通うが、そこで会った回復者の多くが、自分たちもNさんと同じ病院に入院していたひどい「アル中」だったと笑顔で話していたからだ。依存症本人だけでなく、その家族や、子供時代に酒害者から虐待を受けた後遺症に悩む成人も入院していた。Nさんの家族もカウンセリングを継続し、治療者を含めた家族の話合いも行われた。それら多くの人々との交流から、自分の酒がいかに家族を痛めつけていたかを教えられた。

  「入院中は準備期間。退院してからが本当の治療だ」と仲間から聞いた。3カ月間の入院生活を終えて、退院間近のNさんは、いま人生の岐路に立つ自分を感じている。 


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AKH 文責:竹村道夫(初版: 99/1) 


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