【摂食障害と妊娠出産 】   赤城高原ホスピタル

 (改訂 2000/09/27)


[ 注意 ] 

 このページは、一般の読者、ビジターにとっては、やや専門的過ぎるかもしれません。

 
[ 摂食障害患者の妊娠と出産 ]

摂食障害は若い女性に多いので、妊娠、出産に関して留意する必要があります。起こりうるトラブルとして、流産や妊娠中絶が多いこと、低体重出産、つわりなどの妊娠合併症、出産後うつ病などが報告されています。摂食障害につきものの栄養障害、過食行為、いろいろな浄化手段(嘔吐、下剤乱用、利尿剤乱用、運動過剰、絶食)、処方薬や乱用薬にも注意が必要です。これらの問題は摂食障害本人の妊婦だけでなく、胎児の成長に影響をあたえることがあります(Powews PS 1997., Franko DL, et al. 2000.)。

可能なら、摂食障害の治療をして、病状が安定した後に妊娠するほうが望ましいでしょう。

たとえば、妊娠による体重増加の欠如、ひどいつわりなどの際は、摂食障害の既往がないか聴取すべきです。一部の女性は、摂食障害歴を隠す傾向があるので、疑わしい場合には、ボディーイメージの障害、食行動と食事習慣などについて質問すべきです。

摂食障害の女性は、月経がなかったり、不順であったりするために、妊娠がありえないと考えている場合も多く、妊娠に対して用意ができておらず、望まれない妊娠である可能性が高く、時には妊娠後期まで妊娠に気づかなかったケースが報告されています。

摂食障害者の妊娠と出産に関しては、精神科医とハイリスク妊娠の専門医の協力が必要です。

一般には、妊娠中には、摂食障害の症状は軽快することが多いようです。ある報告(Blais MA et al. 2000)では、この軽快傾向は、過食症では、出産9ヵ月後まで続いたが、拒食症では6ヵ月以内に悪化再発しました。

別の報告(Morgan JF et al. 1999)では、過食症患者の妊娠に関して、妊娠中に過食症の軽快が見られたものの、出産後には57%の患者は、妊娠前より症状が悪化しましたが、34%は過食症の診断基準に該当しなくなる程度まで軽快しました。

過食症者の妊娠に関して、出産後のうつ状態が過食症合併患者の3分の1にみられたという報告(Morgan JF et al. 1999)があります。

摂食障害を持つ母親は、自分の子供の食事に関しても困難を感じる場合が多いので、乳幼児の食餌について、専門家による経過観察と助言が必要です。


[文献]

American Psychiatric Association: Practice Guideline for the treatment of patients with eating disorders (Revision). Am J Psychiatry. 157:1, 2000(Supplement).
.
Blais MA, et al.: Pregnancy: outcome and impact on symptomatology in a cohort of eating-disordered women. Int J Eat Disord Mar;27(2):140-9 2000.

Franko DL, et al.: Detection and management of eating disorders during pregnancy. Obstet Gynecol Jun;95(6 Pt 1):942-6 2000.

Morgan JF, et al.: Impact of pregnancy on bulimia nervosa. Published erratum appears in Br J Psychiatry Mar;174:278 1999.

Powews PS: Management of patients with comorbid medical conditions, in Handbook of Treatment for Eating disorders, 2nd ed. Edited by Garner DM, Garfinkel PE. New York, Guilford Press, 424-436, 1997.



ご連絡はこちらへどうぞ ⇒ address
または、昼間の時間帯に、当院PSW(精神科ソーシャルワーカー)にお電話してください ⇒ TEL:0279-56-8148

AKH 文責:竹村道夫(2000/09)


[トップページ] [サイトマップ]