ライブレポ No.122
Special Thanks to hyokoさん


1999.12.19(日)
OKST 99 00
 千葉県文化会館

<お題目>
1.ステレオ 2.FAT MAMA 3.江古田 4.僕はここにいる (5'時報)5.砂時計 6.やわらかい月
7.One More Time One More Chance 8.ツバメ 9.カルテ 10.水のない水槽 11.Passage
12.アレルギーの特効薬 13.ドミノ 14.Ticket to Paradise 15.パンを焼く 16.ガムシャラバタフライ

17.やさ男の夢〜お昼休み〜やさ男の夢
−アンコール1−

18.振り向かない 19.セロリ 20.審判の日
−アンコール2 −

21.明かりを消す前に


 初めての One knight。

実は今回、忙しさを理由にあまり新譜を聞き込んでなかった。
そして隣にまさやんライブ初体験の友達がいた。 だからとにかく楽しめたらいいな・・
とそんな風にしか思ってなかった。
  14列目、席が近かったこともあって、最初の2曲は久しぶりにまさやん会えた嬉しさと
表情が見える幸運とで舞い上がっていた。

  それが・・江古田から、椅子にすわっての弾語りから変わった。
  江古田でライトは暗くなり、左右の背後にあるコンクリートっぽいオブジェというか
建物のようなセットが浮かび上がった。まさやんは椅子にすわりライトを浴びて唄ってる。
  その時頭に浮かんだのは使われていない工場、あるいは倉庫。

彼はたった一人で座って唄う。
その声が誰もいない建物に響き渡るそんな図。
  圧倒的な存在感だった。 声もギターの音も。私はすっかりもっていかれていた。

自分の存在がどんどん小さくなってゆくような気さえした。息苦しい位だった。
何度か泣きそうになった。 それを感動と呼べばいいのか自失と呼べばいいのかよくわかんなかった。


  僕ここのイントロ。何かはわからなかったけど、まさやん失敗したらしい。
突然演奏をやめて "失敗した〜" と言うと、椅子ごとクルクル回った。170度位(笑)。
"明かりを下さい〜" の声に新しいライトが一筋。会場は暖かいからかいのざわめきに包まれていた。
私もホッと息をついて笑った。こういう失敗は本人にとっては不本意だろうけど、
ちょっと嬉しい気もする。存在が身近になった。 "どうやって入ろうっかな〜"とまさやん。

   "そのまま行っちゃおうかな"
  そうして本当にそのまま始まった 僕ここ。 ・・・はすごかった。あっという間に
また彼は会場中をさらって自分の歌の世界の中へ引きずり込んだ。

背景に青空と雲の映像。
僕ここのサビとあいまって、まさやんの背後にはものすごく巨大な空間が見えた。
彼が作った空間。
声はどこまでものびる。会場の空気も何もかもすべて彼のものだった。
  この曲をモチーフに、ショートストーリーを作ったことがある。

私はそれを少しだけ反省した後悔はしてないけど。
この曲はもしかするとそんなイメージなんかでくくれないのかもしれない。そう思った。
もっともっと大きなものを抱えているんだって。
  まさやんの存在感が大きくなるとギターの音も声も時々現実離れして聞こえる。

自分が同じ空間にいて生の音を聞いてるってことが信じられなくなる。
あまりに存在が違いすぎるから。
  そんな時、ギターと声にまじって聞こえる
ぱたっ ぱたっ っていう軽い音。
始め何かな と思った。それはまさやんが足でリズム取る音。
スニーカーが規則正しく交互に動いてる。
なんかかわいい。 そして安心する。
たぶん唯一の機械を通さない音。(正確にはマイクが拾ってるに違いないけど)
その音は、今聞いてるものが、今いるここが現実だよ。って語ってる。
そしてそのリズムもまた音楽の一部なんだ。
私はちょっとだけ集中して足音を聞いてみた。 どんどん嬉しくなった。 ちょっと泣きそうな位。

  曲が終わるとまさやんは必ずといっていいほどチューニングをする。

これ、破格に回数が多い方なんだそうだ。
そしてMCはチューニングをしながら、あるいはギターを抱えて、
いつものように会場とのかけあい漫才みたいに続く。
ウラまさやん。個人的にそう呼ぶ。
だって演奏中とのギャップがあまりにありすぎるんだもの。 椅子に座り直す時の足の動き、
ツアーTシャツ(たぶんカレンダーに付いてるやつ)にチャックがひもを巻き付けてるように見えるカーキのパンツ。
ふわふわにふくらんだ髪。 曲のあいまのまさやんは 近しい存在だと錯覚させてくれる。

  シンケーサーを使う曲が2曲続いた。手元の机の上で、まさやん自身がシンケーサーを操ってる。

シンケーサーのリズムに合わせて・・の演奏でも、いつ始めるか・・は彼自身にかかってる。
・・カルテの間奏だったか、シンケーサーのボリュームを途中でかえるとこがあった。
まさやんは真剣な横顔で左手で軽くギターを抱え、右手で機械をいじってる。
ふっと、今回のアルバムってこんな風に作ってたのかな と思った。
一人でスタジオでギターやその他の楽器と戯れたり取組んだりしながら・・・

会場はシーンとして聞き入ってる。

まさやんはゆっくりと音を作ってる。

  自由と孤独。


たった一人の弾語りはたぶんその両方を含んでる。
ステージに誰もいない、自分一人で会場に向き合わなくてはいけないっていう孤独と
いつ曲を始めても、演奏に遊びを入れてもかまわないっていう自由。
(実際にはライトその他、そう勝手なことは出来ないだろうけど)
まさやんは何を選んで何を捨てたんだろう。
  どの曲だったか、左右のオブジェに明かりが灯り、アパートの窓の明かりのような
ライティングがあった。真ん中に浮かぶまさやん は今度は街角で歌ってる。

それがいつのまにか 花火を連想させた。 花火が一人、ピアノに向って歌った姿。
これだけ会場にはぎっしりと人がいるのに、まさやんは たった一人だった。

 アレルギーの特効薬。

ダンシングターイム! と叫んで始まった。
会場中がワッと立ち上がる。斜め前の年配の女性も隣の仲のよさそうなカップルも隣の友達も。
  そして私はまたも まさやんにもってかれた。 今度は全然違う方向に。

巻き込まれたという方があたってる。気分はライブハウスだった。 ステージのセットがシンプル
だったことがすごく嬉しかった。 そう、過剰な演出より、一緒になって楽しんでるって
思える、親しめる空間の方がずっとずっと幸せ。 まさやんの音楽は、ライブのスタイル
は それだから癖になる。 またここにいたい、ってそう思う。 きっとみんな。


 パンを焼く。

ライブに先立って、ニコイチも演奏してくれてた。
その時友達にしょーがないって本番でもやるんだよ ってゆったら、えー出来るかなぁ と言ってた。
 本番、ちゃんと出来てる。ニコイチに感謝。

それからガムバタ・アンコールのセロリでもちゃんとサビで手を振った。
無理することはないけどね。 なんか嬉しいよね。

  まさやんは歌う。

ギターをかき鳴らす。

左手で弦をはじく。

右手でドラムスがわりにギターのボディーをたたく。

・・・そして笑ってる。


立って足でリズムを取る時、
向かって右足だけが横に出るのはあれは癖なんだろうか。 ちょっとほのぼのした。
 そんなとこに注目されても困るだろうけど。
  私は途中から、今日はすべての曲順を覚えて行こう。と決心して左手の手のひらに
曲順を書き付けてた。当然、左手は真っ黒。

字が消えると困るからしょーがない、手のひらを叩くかわりに手の甲をたたいてた。
ライブが終わって見てみると、しっかり毛細血管が切れて赤く点々と内出血してた。
  それくらいの大騒ぎ。 まさやんにのせられた。

  2回目のアンコール。 やや猫背気味にまさやん、どもども って感じで所在なげに登場。
そしてピアノの前に座った。
  ピアノの前のまさやんはギターを持ってる時よりちょっと落ち着きがない気がする。
偏見・・かもしれないけど。 ピアノの下から見える足をちょっとぶらぶらさせてる。
 そういえば、ツバメを弾くの前にはピアノの上に両腕を投げ出してピアノを抱えるよう
な感じでベタッとくっついてMCしてたっけ。
  2曲のピアノ弾き語りを聞いて、ひとつかなわない夢が出来た。一度、ピアノを弾いてるまさやんを

後ろから覗き込んでみたいな・・・って。 指の動きを見てみたい。
少し猫背気味の天然パーマ頭ののっかった肩ごしに。


  最後の曲、灯りを消す前に。

みんなが思い入れたあの一言を私は静かに待った。
それは、実にすっと耳に入ってそして抜けていった。


さりげなかった。

でもそれがかえって嬉しかった。変な気負いがあるよりはずっとね。

  最後にまさやん またひょーひょーとピアノ前から降りて、そしてステージを横切って帰っていった。

ちょっとおどけ気味に手を振りつつ軽くおじぎをして。


  客電がついてみんなが席を立つ。
私はすごくすっきりとした気分できびきび動いてた。
近くにいた宇宙人達に笑顔で手を振る。

前半のせつないような息苦しさより後半の気持の高揚の方が強かった。
そして未だにどこかがふぬけたまま、だ。

  ・・・でも、それって結局どっちも まさやんにのせられたってことじゃないか。
  ・・・やっぱりラ
イブは、癖になるわけだよね。


  〜ご挨拶〜
読んで下さった方、ありがとうございました。 相変わらずのまとまりない文章につきあってくれてありがとう。
  いつか、あるいはまた、同じ会場で同じ空気を胸いっぱい吸えることを願ってます。                               


 もどる