エンドファイト中毒
1995年からライグラスストローを給与された岩手県等の搾乳牛、肉用牛群が増体量の低下、唾液分泌の亢進、体温や呼吸数の上昇、受胎成績悪化およびプロラクチン分泌抑制によると考えられる泌乳量の減少等の症状を呈しました。また、1997年群馬県ではトールフェスクを給与していた搾乳牛群において食欲不振、体重の減少および起立困難等の症状が認められました。これらの農家の共通点としては粗飼料としてライグラスストローあるいはトールフェスクだけを給与していたことであり、この給与していた輸入乾草に感染していたエンドファイトという菌が産生する毒素(生理活性物質)が中毒の原因でした。
エンドファイトは色々な生理活性物質を産生することが知られていますが、エンドファイト感染ライグラスストローには、ロリトレムB、トールフェスクにはエルゴバリンという家畜に毒性を示す生理活性物質が産生されます。しかしながらエンドファイトの生理活性物質には家畜に中毒を誘起させる作用とともに、植物側からみるとエンドファイト感染によって病害虫に対する抵抗性や環境のストレスに対して耐性を獲得したりする有益な作用があります。特に輸入ライグラスやフェスクのストローは、このようなエンドファイトによる病害虫の防除効果を活用して栽培されている芝草用の種子を取ったあとのストロー(内地でいえば、米を収穫した後のイナワラのようなもの)がほとんどです。したがって、輸入されているストローはこのエンドファイトに感染したペレニアルライグラスやトールフェスクであろうと思われます。
これらの中毒の対策としては、農家においてのエンドファイトに関する正しい理解と、使用にあたっては輸入ストローだけでの使用を極力避けることが肝要と思われます。硝酸態窒素の項でも記述したように、多数の粗飼料を組み合わせて使用していれば例えエンドファイト感染ストローを給与する状況になっても摂取飼料全体で考えると家畜に毒性を示すロリトレムやエルゴバリンの濃度が希釈される状態となります。
これらのストロー類は安価なこともあって肥育農家のみでなく、酪農家にあっても広く利用されつつあります。そのため、疑わしい症状を発見したときは当該ストローの使用を休止し、家畜保健衛生所等に速やかに連絡することなど、適切な対応が必要です。
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