【エフェドラ 、続報3、終に販売禁止へ】 赤城高原ホスピタル

(改訂: 05/02/23)


[ はじめに ]

2003年12月30日、アメリカFDA(食品医薬品局)がエフェドラ製品販売禁止の方針を打ち出しました。続報3では、このニュースを中心にエフェドラ関連問題の展開を追います。ニュース紹介のようなものが多くなるので、このページでは、新しいものを上に書いてあります。


[ 別ページの関連記事 ]

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 →「エフェドラ(Ephedra)の危険性、続報1」
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 →「エフェドラ、体験者のメッセージ、第1部」
 →「エフェドラ、体験者のメッセージ、第2部」


エフェドラ製剤で重症精神症状(新たな調査報告)


Maglioneらは、2001年9月30日までにFDAに報告された1820例のエフェドラ製剤による副作用報告を調査し、その中に57例の重症の精神科的問題ケースを発見しました。精神病症状や、重症うつ病、躁病、興奮、幻覚、睡眠障害や自殺念慮が含まれていました。10例では、自分か他人を傷つけ、26例が入院しました(そのうち6例以上が強制入院)。3分の2の患者が既存の精神科疾患(うつ病、摂食障害、双極性気分障害など)があるか、または他の医薬品や違法薬を服用していました。(05/01)
出典:Margaret Maglione (RAND Corporation, headquartered in Santa Monica, California)他、American Journal of Psychiatry, January 2005


[「エフェドラ」関連、日米公式文書]


(財)日本医薬情報センター(JAPIC)提供、エフェドラ情報(04/12/22確認)

FDAのエフェドラ含有サプリメント禁止関連文書(04/12/22確認)


[「エフェドラ」、全米で販売禁止、米食品医薬品局(FDA)発表]


米FDAは、「エフェドラ」成分を含むサプリメントが、心臓発作や脳卒中などの疾病や傷害の過度のリスクがあるとして、2004年4月12日より全米での販売を禁止すると発表しました。

これより先、2003年12月末に、FDAは販売禁止を発表していました。これに対しメーカー2社が禁止の差し止めを求める仮処分を申請していましたが、ニュージャージー州の連邦地裁が2004年4月12日に却下の決定をしました。

栄養補助食品の販売禁止は米国では初めてです。エフェドラ製品はインターネットなどを通じて日本にも個人輸入されていましたが、今後はできなくなります。


Judge's ruling makes ephedra illegal in US

Federal Judge Rejects Ephedra Ban Delay

Ephedra Ban Takes Effect Nationwide

Ephedra taken from local shelves

エフェドリンアルカロイドを含む栄養補助食品に関する米国FDAの対応について(国立医薬品食品衛生研究所)


[人気のやせ薬「エフェドラ」、米食品医薬品局(FDA)が発売禁止へ ]


 2003年12月30日、米食品医薬品局(FDA)が、ダイエット効果があるとされる成分「エフェドラ」を含むサプリメント(栄養補助食品)の販売を全面的に禁止すると発表しました。米政府が栄養補助食品の販売禁止に踏み切るのは初めてのことです。禁止措置は数週間以内に公布され公布後60日で施行されますが、FDAは、30日、62の関連企業にこの決定を伝え、消費者に向けては、購入や使用をただちに中止するよう呼びかけました。

 米厚生省のトミー・トンプソン長官は同日、記者団に「今こそ、これらの商品の使用を止めるべき時だ」と述べました。

 FDAのマーク・マクレラン局長は、どのような警告ラベルを貼り付けても、エフェドラの危険性は、その恩恵を上回っている、と述べました。

 米政府は、エフェドラを含む商品の販売を違法とする法令を「今後数週間以内に」(マクレラン局長)準備すると予告しました。

 アメリカのダイエット・サプリメント業界は、年間、190億ドルのビジネスで、1000以上の会社が関わっていますが、処方箋不要のサプリメントの販売が禁止されるのは初めてのことです。

 エフェドラは中国原産のハーブから作られる漢方薬「麻黄(まおう)」の成分で、漢方薬はせき止めなどに使われています。エフェドラには覚醒(かくせい)や代謝促進の働きがあり、ダイエットや運動能力アップの目的で、アメリカでは数百万人が使っています。減量に効果があるとしてスポーツ選手などに人気がある一方、心臓発作や脳卒中を起こす危険性が以前から指摘されていました。

 業界団体は、米国内で年間1200万人から1700万人が常用しているとして、安全性を強調、「エフェドラ教育委員会(EEC)」を設立し、販売禁止に反対していました。EECは2002年初め、FDAに「業界基準を満たしているエフェドラ・サプリメントの安全性や、体重を減らす必要がある消費者が享受する健康上の利益には何ら問題がない」とする声明を送付していました。

 メーカーは使用上の注意に従えば安全だと主張していますが、FDAはこれまでに155人の死亡例が報告され、苦情は1万6000件を超えるとしています。

 医学雑誌、Annals of Internal Medicine によると、エフェドラ製品のダイエット・サプリメント全体の売り上げに占める割合は1%以下に過ぎないが、ダイエット・サプリメントによる Centers for Disease Control and Prevention への重篤な副作用報告の64%がエフェドラ製品関連であるとのことです。

 日本ではエフェドラ製品は販売が禁止されていますが、このHPの関連ページで報告されているように、個人輸入やインターネットオークションで入手するケースが目立ち、法律違反の販売も横行しています。

 2003年2月17日にはエフェドラ含有の栄養補助食品を常用していた米大リーグ、オリオールズのスティーブ・ベクラー投手(当時23歳)がフロリダの春のトレーニングキャンプに参加中に突然死しました。血液中に多量のエフェドラが検出され、検視官はエフェドラを含むサプリメントの摂取が突然死に影響したと断定し、家族が製造元を相手に訴訟を起こしました。

 上記の事件以来、副作用が社会問題としてマスメディアで取り上げられ、FDAは「死亡例が報告されている」との警告ラベルを添付することを義務付けました。またニューヨーク、カリフォルニア、イリノイ州は販売を禁止し、ほとんどの薬局チェーンは販売自粛に乗り出しました。

 この業界のトップ企業であるメタボライフ(Metabolife、サンディエゴ)社さえも、州法の曖昧さを理由に、2003年11月から販売を中止しています。

 わずかに、一部の製造業者が主としてインターネットを通じてエフェドラ製品の販売を続けている状況です。

 このような動きに対応して米国内でもエフェドラ離れが加速してきています。2003年の売上高は5.1億ドルまで落ち込む見込みとのことですが、これは、アメリカにおけるエフェドラのピーク時(2001年)の売上高、13億ドルからみると、61%ダウンです(Nutrition Business Journal)。

 1994 年に制定された Dietary Supplement and Health Education Act (DSHEA)という法律によって、栄養補助食品やハーブ商品などの販売にはFDAの承認が不要で、FDAが販売を禁止するには危険性を立証する責任が課せられることになりましたが、FDAのマクレラン局長は「単なる副作用例の報告だけでなく、体内でどうエフェドラが作用するか臨床的研究に基づき決定した」と強調しています。

 この度の決定は、FDAがエフェドラ製品の副作用報告を受け始めてから8年後に出されたものです。関係者の間では早くから危険性が指摘されていたので、FDAの決定は遅かった気がします。その理由について、上記の法律、DSHEAが禁止法制定の足かせになった、とマクレラン局長はのべました。

 1997年、FDAは、警告ラベルを貼ることとエフェドラの使用量制限を勧告しましたが、この動きは強力なサプリメント業界の抵抗に遭って阻止されました。

 今回FDAは、これまでの調査と研究により、エフェドラの危険性を細部まで完全に証明できたとし、仮に業界がこの法律制定を阻止するような裁判に打って出ても、勝訴できる用意と自信があるとしています。

 皮肉なことに、上記のエフェドラ製品販売禁止予告の後、一部のエフェドラ製品ファンが、在庫増しの動きに出ているとのことです。インターネット販売をしている製造販売業者は、通常の数倍の注文を受け付けている、とアメリカのメディアが伝えています。

 今後、エフェドラ製品メーカーや販売業者は、アメリカ国外に拠点を移したり、摘発が難しいネット販売に切り替えたりする動きに出ることが予想されます。FDAは、この展開に対しても既に対応策を考えてあるようです。



 以上を概観して筆者のコメントとしては、これまで、サプリ業界に煮え湯を飲まされ続けてきたFDAがようやく本格的な反撃に出た、というところでしょうか。


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AKH 文責:竹村道夫(04/01/03)


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