ホスピタルお散歩礼賛記    赤城高原ホスピタル

(改訂 2001/12/20)


「私一人がこの場所を独占している贅沢さに感動します」

 私にとって、入院生活の中で一番の楽しみは散歩です。特別面白い遊び場所や素敵なお店がある訳ではないけれど、ただただ歩いているだけで普段見逃していたいろいろなことに気づきます。

 雨が降った次の日や風が強い日には、遠くの山や街がいつもよりはっきりくっきり見えます。空が青い晴れた日にはよりいっそう強くそれを感じます。都会の生活や、トラブル続きの対人関係に疲れて引きこもっていた頃、天気には晴れか曇りか雨降りか、暑いか寒いか、それくらいの区別しかありませんでした。赤城に来て、天候の微妙な変化によって景色の見え方がこんなにも違うんだと気づきました。

 また、店や会社の看板や信号など、余分なものがない自然がこんなにも気持ちがいいものだということも知りました。大きな畑の中の細い畦道を歩きながら、ふと周りを見るとこんなにも広いところに私以外誰もいなくて、私一人がこの場所を独占している贅沢さに感動します。息をすることさえつらかった私が誰の助けも借りずいまここに一人ですっきり歩いていることを不思議に思ってしまいます。

 病院の隣のゴルフ場周りには、銀杏の並木があります。毎日歩いていると、どんなに鈍い人でも、葉っぱが黄色くなって散っていく変化に気づきます。私の心配などよそ事に、季節はいつの間にか秋から冬になったのです。そういえば真紅に映えていたもみじも散ってしまいました。季節は確実に変わってゆきます。冬の次には春が来る。必ず来る、確か院長がそうおっしゃっていた。面接の場面を思い出しながら、ゴルフ場の外周に沿って坂道を登ります。入院前の自分の人生を思い、これからの人生を考えながら、頭上を覆う林の中の小道を抜けると、突然前方が開けます。「ひゃーすごいっ」。悩みや心配を吹き飛ばすような景色が現れます。遠くに広がる雪を頂いた山や青空を背景に、ゴルフ場の芝生、池のさざなみ、そして一瞬の木々のざわめき。自然が私を歓迎し、これからの人生の豊かさを示してくれたのに違いありません。(K.S. 20代女性)


 「ホスピタルの周りは自然がいっぱい。新しい嗜癖?にはまっています」 

 ホスピタルに来て2カ月、とりあえずお酒と薬物は止まっています。食べ吐きはまだ完全にはやめられませんが、気持は随分楽です。ここに来て私は新しい嗜癖?にはまっています。新しい嗜癖、それは散歩です。ホスピタルの周りは自然がいっぱい。散歩がこんなに楽しく、こんなに慰めになるとは、ここに来るまで知りませんでした。私の大好きなお散歩コース、お勧めスポットをあなたにこっそり教えてあげますね。

1. 赤城村運動公園の芝生(徒歩15分)。 桜の木々に囲まれた芝生のスペースが私は好きです。遊具やベンチもあり、子供連れの親子を見ていると、気がなごみます。この下の坂道は、桜のトンネル。今はツツジが満開です。

2. 赤城花木センター(徒歩10分)。 ホスピタル前のバス停の近く。ハウス内の鉢植えから植木まで、種類も豊富。従業員の方も明るく親切です。毎日覗いても飽きません。

3. 勝保沢のバス通り(徒歩25分)。
 道の両側に田畑が広がり農家が点在します。田畑の畦に菜の花が咲き乱れるころは最高でした。道端に取り残された昭和年代の看板を見ていると、なつかしくて離れがたくなります。あのころに戻れたらどんなにいいだろう。・・・

4. 病院から徒歩1分の桜並木。 今は新緑が目に鮮やか。朝の澄んだ空気の中、緑のトンネルをくぐると、軽井沢の高原リゾートの雰囲気です。

5. ゴルフ場(赤城ゴルフクラブ)へのアプローチの桜並木(徒歩7分)。 桜の時期は圧巻。先日、花吹雪の下を歩いたときには、幻想的なほどの美しさになんだか怪しげな気分になってしまいました。桜並木を抜けるとパッと視野が開け、榛名富士を背景に渋川市街が眼下に広がります。遠くには雪をいただく谷川岳まで見えます。

6. ホスピタル伝統のお散歩コース。ゴルフ場ぐるり1週(ゆっくり歩いて90分)。 コース脇を歩くと、その季節ごとに自然がいっぱい。今だと、コースの芝生の緑と植込のツツジの赤のコントラストがきれい。コースごしに見る赤城高原ホスピタルは、夢のお城。・・・(と、院長ご自慢です)。 途中、高台からコースを見下ろし、遠方まで見渡せるポイントがあり、息を切らして坂道を上った疲れも吹き飛びます。朝早く散歩すると、兎やキジに会えます。ホスピタルの山荘のベンチで一休みするのもよいけど、気持良いからとうたた寝したりすると、たまにブヨに刺されるから注意してください。

 えっ、何ですって、そんなに散歩ばかりしていて、治療になるのかですって? ご心配なく、ちゃんと治療もしていますよ。お散歩の時も、面接で院長先生に言われたことを思い出しながら歩きます。今朝も、院長先生に<あなたは、ニコニコ仮面ですね。まず第1に、自分の感情を取り戻すこと、とくに自分のネガティブな感情に気づくことが大切です。>と言われたことを思いだしながらひとりで散歩していました。そうしたら不思議なことに、本当にいろんなことに怒っている自分に突然気づきました。動悸がして頭がくらくらしてしまいました。落着いて落着いて、と自分に言い聞かし、次にそれを小さな声で口に出して言ってみました。今まで自分から切り離していた怒り。新鮮な驚きです。ぶつぶつ言っていたら、今度は新たな怒りがふつふつと沸き起こりました。「これだわ、先日、私が突然花瓶を床に投げつけた訳は」と思って、今度は、呪の言葉を大声で言ってみました。しばらくやってみて、これって、知らない人が見たり聞いたりしたら、狂人だわ。と思って辺りを見まわしたら、大変! 前から、村の人が歩いてきました。なんとか鼻歌でごまかしたけど、思わず赤面してしまいました。この怒りをどうしたらいいの。今度の面接で聞いてみよう。 (1999年5月、 ニコニコ仮面)


● 「フィトンチッドの香り豊かな樹木の間を歩くと生きていてよかった、と思います」

 東京では、人が怖くて、電話にも訪問者のチャイムにも出られず、カーテンを閉めた自室に閉じこもって飲んでいました。考えてみると、中学時代から自傷行為と自殺未遂の繰返し。自分に優しくすることを忘れていました。
 入院して1カ月。そんな私が、ここでは早寝早起き。健康的な毎日です。小鳥のさえずりに起こされて、私が朝1番に病室の窓を開け放ちます。新鮮な高原の空気が甘い!フィトンチッドの香り豊かな樹木の間を歩くと、生きていてよかった。幸せだなあ、と思います。
 最近、敷島温泉までの抜け道を教えてもらい、温泉通いにはまっています。落葉が足にふわりと優しい山道ルートを約1時間。敷島駅の裏側に温泉があります。入浴料は3時間300円。もちろん露天風呂つき。温泉好きには極楽です。ただし帰りは登りですから、少し時間の余裕を持って予定をたてましょう。            (1999年11月、M.K. さん)


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 赤城高原ホスピタル体験記

 病院周辺の風景写真1
 病院周辺の風景写真2
 病院周辺の風景写真3
 病院周辺の風景写真4 未完成
 病院周辺の風景写真5 未完成
 病院周辺の風景写真6 未完成

 
 病院周辺の草花と自然の写真1
 病院周辺の草花と自然の写真2
 病院周辺の草花と自然の写真3
 病院周辺の草花と自然の写真4 未完成
 病院周辺の草花と自然の写真5 未完成

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AKH 文責:竹村道夫(2001/12)


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