【 ホスピタル紹介 】           赤城高原ホスピタル     (更新日:99/03/18)


 日本全国にアルコール症の専門病院は約10カ所ありますが、「赤城高原ホスピタル」は北関東では唯一の専門病院です。日本のほぼ中央、群馬県渋川市の郊外にあり、伊香保温泉から約40分の、赤城山麓の景色のよい小高い丘に位置しています。鉄筋コンクリート二階建ての病棟は窓が大きく、明るい光に満ちあふれています。窓からは榛名山、子持山の眺望がすばらしく、渋川、伊香保温泉街の夜景は絶景です。ベッド数107のうち、8床のみが閉鎖病棟で、あとは開放病棟です。入院形式は、原則として患者さん自身の意志による任意入院です。医療保護入院(強制入院)は、入院時に意識障害があったり、幻覚妄想状態で放置しておくと危険がある方など年間に数名です。平均在院患者数は100名程度ですが、開放的で入退院自由のために、1月に50名位の入退院があり、平均入院期間は50日程度です。入院しているアルコール依存症患者の年齢は10代から老人まで広く分布していますが、やはり酒害者の中心世代は中高年層です。なお、当院では女性アルコール症患者の比率が高く、約3割です。Cycling Animation

 

当院での治療の中心は、家族療法と集団療法です。もちろん、肝障害を中心としたアルコール関連身体疾患の治療も平行して行いますが、アルコール依存症の治療とは、ベッドと点滴ではなく、まして隔離収容ではなく、断酒継続の基礎になる健康な対人関係と生活習慣の獲得です。
 さて、アルコール症の治療に当たっては、家族全体を視野に入れて治療をする必要があります。当院は、アルコール症の専門治療施設として、酒害者本人の依存症治療ばかりでなく、酒害問題に付随した家族問題や家庭内暴力などにも対応し、酒害者家族の相談、治療、入院などにも応じています。当院では、酒害者本人と同等に酒害者家族への治療や援助を重視しています。当院入院患者の大部分はアルコール依存症患者ですが、一部は酒害者の家族です。つまり酒害者の親や配偶者、子供たちのような方々です。とくに家族のための治療プログラムは充実しており、週に4回の家族のための集団療法のほか、アルコール症本人回復者、家族回復者、摂食障害回復者、アダルト・チャイルド回復者などからの家族へのメッセージがあります。メッセンジャーの大部分は、かつて当院に入院されていた方々で、一部は回復して当院の職員として就職された方です。
 また、アルコール依存症の治療では、自助グループとの協

ホスピタルの窓から見える榛名山−伊香保温泉街

[ 病院の窓から見える榛名山と伊香保温泉街 ]

力が欠かせません。当院では、AA(アルコホリクス・アノニマス)、断酒会ほか、約20ほどの多種多様の自助グループと日常的に交流を持っています。
 病院スタッフは、3人のアルコール専門医が常勤のほか、非常勤の精神科医(8)、内科医(1)、常勤ソーシャルワーカー(4)、非常勤臨床心理士(1)、看護スタッフ(約50)など、この規模の病院としては最高レベルです。
 病棟設備としては、広い板張りの体育館、4つのミーティングルーム、3つのシャワールーム(使用無料)、明るい食堂、売店、2つの喫煙室(24時間使用可能。病棟内禁煙)など。医学検査としては、X線のほか、脳波、内視鏡などがあります。
 患者自治会があり、役員は月に1度、選挙で選ばれます。治療的雰囲気を保ち、快適な入院生活を送るための自治会役員と病院スタッフの話し合いが定期的に行われています。


どうやって酒害者を治療につなぐか

 アルコール依存症は、別名「否認の病気」といいます。つまり患者は自分の飲酒問題や疾病を極端に過小評価するか全く認めないのが通例です。したがって酒害者本人が自主的に断酒のための治療にやって来ることはかなり例外的です。困った家族が相談に来ることがほとんどです。それゆえ、アルコール治療は家族の相談から始まります。私たちはやっと援助ネットワークにたどりついたこの家族に、「本人を連れて来るように」と追い返すのではなく、家族自身ををケアし、教育し、治療することに全力を挙げています。実は、酒害者本人の登場を急がず、家族のケアを優先することが、結局は治療の早道であることが多いのです。
 アルコール依存症者は、身体疾患やトラブルのために、一人で長期にわたって飲み続けることはできません。逆にいうと、長期に飲み続けている依存症者の周りには、「飲み続けることを可能にしている人」がいることになります。この人を「イネイブラー」といいます。イネイブラーは、自分が関与することで、結果的には酒害者本人の自立と責任制を彼らから奪い、問題の解決を遠ざけているのに、それに気付かず、患者の飲酒問題を手放すことをしないことを患者への愛情だと誤解していることが多いのです。イネイブラーは、患者を支えようとして、結果的には、病気の継続と悪化を支えてしまうのです。酒害者家族は、当院の体験的教育的治療によってこのことに気づき、行動修正をすることが可能です。家族が変われば、アルコール症本人の飲酒行動も考え方も変わってきます。

赤城ゴルフクラブからみたホスピタル

[ 赤城ゴルフクラブから見た赤城高原ホスピタル ]

若い女性のアルコール依存症について


当院入院患者の3、4割は女性ですが、とくに29歳以下の若年女性のアルコール依存症患者が最近増えてきました。彼女たちの7割以上は、摂食障害を合併しており、実際には、大部分は摂食障害を先に発病して、それにアルコール症を併発した人たちです。幼児期や思春期に、機能不全家庭の中で傷ついたり、いじめを受けたり、困難な時期を過ごした方がほとんどです。また、精神的、身体的、性的虐待を受けている方もおられます。これら多重嗜癖の女性たちは極めて情緒不安定、衝動的で、自傷行為(ほとんどが手首切り)や自殺未遂などをくりかえしており、他の病院で「境界性人格障害」と診断されている方もいます。
 治療に関しては、まず安全な治療場所を確保することが最も大切です。というのは、これらの女性たちは衝動的で不安定なために、大量の向精神薬投与を受けたり、長期間保護室に入れられたり、逆に治療者と恋愛関係になったり、医療関係者から性的被害を受けたりなど、歪んだ治療関係の被害者になり易く、医療によって二次的に傷つく事が少なくないからです。治療は行きつ戻りつの困難なものになりますが、家族を含めて協力的治療関係が維持できれば、治療予後は比較的良くて、本人も家族も見違えるほど健康的になります。

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何じゃっ子AKH  文責:竹村道夫 


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