硝酸塩中毒
急性の硝酸塩中毒は国内では1960〜1970年代に群馬県、埼玉県、山梨県および茨城県等で集団発生しました。これらの事例は飼料畑に家畜の糞尿を多量に還元した結果、生育初期〜中期にかけて飼料の葉茎部に硝酸塩が蓄積され、それらを給与された家畜が中毒症状あるいは斃死したものです。
表2には国内においても広く受け入れられている飼料中硝酸態窒素濃度についてのアメリカでのガイドラインを示しました。これによれば4000ppm以上の硝酸塩の高い飼料を家畜が大量、継続的に採食した場合、硝酸塩が第1胃内で還元され、亜硝酸が生成、蓄積されます。その結果、ヘモグロビンがメトヘモグロビンに変換され、この血中割合が高くなると家畜は低酸素状態となり呼吸困難、チアノーゼを呈して死亡することになります。
しかし、このような事例は各酪農家における飼料給与方法等の改善により最近ではほとんどみられなくなりました。また、発生減少の原因として、ほとんどの内地酪農では自給飼料率の低下から、購入粗飼料にその大半を依存する状況にあるため、たとえ硝酸態窒素濃度の高い自給飼料給与を余儀なくされていたとしても、その他の粗飼料との組み合わせによって摂取飼料全体としては硝酸態窒素濃度が薄くなることも考えられます。
その一方、輸入量の増加した粗飼料の中には急性中毒は発現させないものの、硝酸塩濃度の高い傾向にあるロットが散見されています(図2)。このような背景から、硝酸塩の話題は急性中毒から慢性中毒の問題へと移行しつつあります。この慢性中毒に関しては流産や繁殖障害との関連を示唆する野外調査結果が国内で数多く報告されています。中毒の証明法として重要なことはその症状を再現させることですが、家畜への慢性中毒に関する実験、再現試験はこれまでに行われていないのが現状です。また、硝酸塩の慢性中毒に関してはその発生を疑問視する報告もあります。しかし、乳牛の高泌乳化を追求するうえでは、これに対する危険因子を除去するためにも飼料中硝酸態窒素のチェックは必要であろうと考えられます。
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