【 AC(アダルトチルドレン)症候群 : 次世代に残る酒害家庭の後遺症 】 赤城高原ホスピタル            

(改訂 00/12/12)


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 アルコール依存症患者の子供として育ち、現在は成人に達した人々のことを英語で Adult Children of Alcoholics という。日本でも、ACOA、AC、またはそのまま英語読みで、アダルト・チルドレンという。AC問題は1970年代からアメリカの専門家の間で注目されるようになり、1980年代から一般に知られるようになった。酒害家庭の子供たちの一部は、非行などの問題行動を起こすが、大部分は目立たずに混乱した家族システムに適応して少年時代を生きのびる。しかしそのような子供たちも思春期以後に、特徴的な感情と行動の障害を起こしやすい。

 酒害家庭の子供たちは、成長期に、歪んだ家族関係の中で、「生き方」を学ぶ。「よい子」ほど、早くから、徹底して、酒害家庭の暗黙のルールを身につける。たとえば酒害家庭では、不仲の両親が問題の本質について真剣に話し合うことはない。その場限りの酒害対策が最優先課題になり、その他の家庭内の問題は無視または放置される。子供たちは、「小船を揺らすな」と教えられる。家庭の秘密を外に漏らしてはならない。両親を困らせるような余計な質問をしてはならない。やがて彼らは、自分の心配や悩みを話すことをやめ、問題に正面から立ち向かうことを避けるようになる。また、両親も身近な大人たちの誰も救い出してはくれない苛酷な状況で、彼らは、期待して裏切られるよりは、誰も信用しないことを選ぶ。さらに、不安になったり、悲しんだりして、余計に両親を困らせたり、惨めな思いをするよりは、自分の感情自体を押し殺すことを学ぶ。

 しかし、幼い彼らが自分に課す「しゃべるな。信じるな。感じるな」というその不文律は、成人して後も不健康な感情、思考、行動の癖として残り、それ自体が彼らの人生を縛る。一般に、ACは自分の感情を認めたり、表現することが苦手である。また彼らは、考え方に柔軟性を欠き、過度に支配的である。あるいは逆に他人に依存的で、自分の人生を主体的に選択することができない。しばしば罪悪感と恐れの感覚に脅かされ、抑うつ感に悩み、他人を信頼する能力を欠いている。大人になった彼らは、かつて体験したことがない「正常な対人関係」を手探りで演じようとして、失敗を重ね、疲れて挫折する。

 ACのこのような障害は、治療あるいは正しい対応によって、回復することができる。また、親のアルコール問題に早くから対処することによって、その次世代の子供たちの成人後に起こるこれらの問題の予防も可能である。

 初め、アルコール関連問題として報告された「AC症候群」は、その後、機能不全家庭で育ち、成人した人々に共通する問題として認識されるようになった。


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AKH 文責:竹村道夫(初版: 99/1) 


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