【窃盗癖 (Kleptomania ) 】  赤城高原ホスピタル

(改訂 15/03/19)



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【関連ニュース】

2014年3月15日(土)、竹村道夫院長が香川県高松市でクレプトマニアについての講演(一般市民向け、無料)をしました。→ 詳細はこちら

2013年4月、窃盗癖単行本、竹村道夫院長監修、飛鳥新社、定価1680円 が発刊されました。
2013年2月、精神神経学雑誌に「摂食障害と万引き」シンポジウム文献が掲載→内容紹介
2013年1月、朝日新聞に窃盗癖関連記事 → 内容紹介 


【HP内関連サイト】

窃盗癖と法律問題 万引き、窃盗と法律問題について、解説と情報。

窃盗癖、文献紹介 窃盗癖、クレプトマニア関連の学術的文献紹介

窃盗癖、竹村道夫講演録 日弁連夏期研修での講演録、別冊購入が可能。

マス・メディアに紹介された窃盗癖治療 新聞、TVなどで紹介された窃盗癖治療について 

クレプトマニアの自助グループ、KAの誕生と成長について 都内で始まった万引・窃盗癖に悩む本人のための自助グループ、「クレプトマニアクス・アノニマス」(KA)の情報。プリント用のお知らせパンフレット。

クレプトマニアの自助グループ、KA世田谷・東北沢ミーティング 基本情報 2004年12月、東京都世田谷区東北沢でKAがスタートしました。

クレプトマニアの自助グループ、KAぐんま 基本情報 2009年7月、群馬県前橋市でKAがスタート!!!!

クレプトマニアの自助グループ、KAなら、KAひょうご 2009年11月、KAなら、2010年10月、KAひょうごが発足しました。参加者募集中。

病院内・万引盗癖ミーティング(赤城高原ホスピタル院内、MTM) 病院(赤城高原ホスピタル)内の万引・窃盗問題ミーティング(MTM)に関する情報

クレプトマニア本人からのSOS このHPを見て、SOSを求めてきた主婦と院長とのメールのやりとり。ビジターへのお願い。

嗜癖問題Q&A: 万引、盗癖 万引と法律問題。

窃盗癖、回復者と回復途上者からのメッセージ  窃盗癖、万引癖回復(途上)者からのメッセージ。

窃盗癖患者、闘病日記 その1
 ある30代女性窃盗癖患者の闘病日記。入院生活、ありのままの今日1日。 

窃盗癖患者、闘病日記 その2
 ある30代女性窃盗癖患者の闘病日記。入院生活、ありのままの今日1日。続編 

クレプトマニア チェックリスト 本人と家族、支援者向けの情報整理マニュアル。初診の方は必見。受診する方は、ダウンロードして記入したものをお持ちください。

万引き・窃盗を止めるための具体策 体験者、先行く仲間が考えた、万引き・窃盗癖への対策 


【窃盗癖、盗癖】 

 「窃盗癖(Kleptomania)」は、DSM-IV-TR(アメリカの精神疾患診断、統計マニュアル)では、「他のどこにも分類されない衝動制御の障害」の章に分類されています。この章に含まれる他の疾患は、間歇性爆発性障害、放火癖、病的賭博、抜毛癖、特定不能の衝動制御の障害です。「Kleptomania」の訳語として「窃盗癖」が選ばれていますが、他にも、「盗癖」、「病的窃盗癖」などの訳語が可能だと思います。



【DSM−Wによる窃盗癖の診断基準】

 DSM-IVの診断基準は、以下の5項目から成ります。
A.個人的に用いるのでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
B.窃盗におよぶ直前の緊張の高まり。
C.窃盗を犯すときの快感、満足、または解放感。
D.盗みは怒りまたは報復を表現するためのものでもなく、妄想または幻覚に反応したものでもない。
E.盗みは、行為障害、躁病エピソード、または反社会性人格障害ではうまく説明されない。

 筆者の個人的意見を言えば、診断基準Aを厳格に適用すると、該当する患者はほとんどいなくなることでしょう。基準Aの表現はもっとゆるやかにすべきだと思います。所有欲や、経済的欲求からでは、窃盗の量や、回数、処罰による社会的評価の失墜、反省と窃盗行為の繰り返し、などが説明できないとき、あるいは、明らかに割りの合わない窃盗行為を繰り返している場合は、診断基準Aに適合すると考えるべきでしょう。



【窃盗 とアルコール症、摂食障害】 

 アルコール依存症の人が飲酒欲求をコントロールできないように、病的盗癖者は、窃盗行為への衝動、欲望、誘惑に抵抗することができません。アルコール依存症と同様に窃盗癖にも嗜癖性の病気としての側面があります。抑制不能な強迫的行為、問題の否認、家族を巻込むという点では、アルコール症と同じです。実際にアルコール症と窃盗癖の両方の問題を持っている患者さんは少なくありません。ただ実際の臨床場面では、アルコール症よりも、摂食障害、とくに過食症の方で、窃盗癖を合併する方が目立つようです。



【行動プロセスへの嗜癖】 

 アルコールと薬物、食物摂取への嗜癖をまとめて「物質嗜癖」と呼び、病的賭博(ギャンブル癖)、借金癖、窃盗癖、買物依存症、ワーカホリック(仕事中毒)などは「行動プロセス」への嗜癖、さらに恋愛依存、セックス依存、暴力的人間関係、共依存などは「人間関係」への嗜癖と呼ばれます。



【有病率、男女比】 

 窃盗癖はまれな疾患で、見つけられた万引者の5%以下でしかない、とDSM-IV-TRに記載されていますが、この数値は低すぎると筆者は思います。男性より女性に多いようです。ストレスの発散方法として、男性は暴力をふるう傾向があり、女性は窃盗に走る傾向があるかもしれません。一方、同じような窃盗や万引きケースでも、男性は犯罪者とみなされ刑務所に、女性は病人とみなされ病院に連れて行かれるから、女性優位という男女比は割り引いて考えるべきである、という説があります。



【窃盗癖関連問題】 

 窃盗癖が続くと、法律的問題、信用の失墜、対人関係の悪化、家庭崩壊、失業などのトラブルに巻込まれます。



【窃盗癖に合併して見られやすい精神障害】 

 気分障害(とくに、大うつ病性障害)、不安障害、摂食障害(とくに、過食症)、および人格障害が窃盗癖に伴ってみられることがあります。

 古くは、強迫神経症との関連が注目されました。最近では、気分障害、物質使用障害、摂食障害、AD/HDとの関連性が注目されています。



【過食症における、万引の動機】 

 どうして、摂食障害(とくに、過食症)に万引が合併しやすいか、詳しいことは分かっていません。心理機制としては、衝動制御の障害に加えて、ある種の歪んだ復讐感、むちゃ食いを自己弁護的に代償する行為(タダだから食べ吐きしてよい?どうせ吐く食べ物のためにお金を払うのはばかげている?)、ある種の達成感を得るための行動、などがありうるでしょう。これらに加えて、飢餓状態における精神機能不全、しばしば合併する感情障害(うつ状態、軽躁状態、まれに躁状態)、人格障害、解離症状、使用薬物(処方薬、市販薬、乱用薬物)や飲酒の影響、思春期、青年期の衝動性、社会文化的傾向などが複雑に絡み合っていると考えられます。[TOP]



【窃盗癖の症例】 

 (症例1) 会社員の妻で、中年女性。中学校時代からの万引常習犯で、万引以外にも、職場や公共の場での金品の窃盗癖がありました。また、幸せそうな女性を見るとバッグや化粧品を隠したり、ゴミ箱に捨てるなどの反社会的傾向がありました。万引、盗癖で10回位捕まり、5度目には警察の家宅捜索でブランドもののハンドバッグが100個も押し入れから見つかり、懲役1年の実刑となりました。出所してすぐに万引をして捕まり、精神科的治療を勧められました。治療開始後1年あまりで、かなりの改善がみられたが、完治を確認しないまま、通院しなくなりました。3年後に、通院をやめて7ヵ月後に万引のため逮捕勾留され、2年間の服役をして出所したと報告がありました。面目なくて、治療していたことを取調べで言わなかったとのことです。

 (症例2) 20代女性。摂食障害で、過食と自発的嘔吐がありました。最初は過食用の食物を万引していましたが、そのうちに衣類、装飾品など手当たり次第に万引するようになりました。摂食障害よりも、窃盗癖の方が家族の悩みの種になりました。入院を繰り返したが、病院内での盗食や窃盗などのため、どこでも強制退院になりました。(同様の例-摂食障害に合併する万引、盗癖例-は多数あります)

 (症例3) 30代男性。自営業経営者の3男として生まれました。大学卒業後就職したが、ある日突然、職場の金を持ちだし、放浪することを数年ごとに繰り返しました。時には、フーグ(解離性遁走)のように一過性の記憶障害があるように見えました。その度に家族に迷惑をかけ、反省するが、窃盗癖は止まりませんでした。アルコール依存症を合併していました。

 (症例4) ACOA(父親がアルコール症)。思春期から過食症が続いている中年女性。20代から万引常習犯で、職場での盗癖もあり、2年半の実刑判決を受けました。刑務所内でも、盗癖が止まらず、時々懲罰を受けました。出所後も盗癖が続きましたが、関係者も病気と見なし、再逮捕より精神科治療を勧めました。しかし入院中も万引、盗癖を繰り返し、最終的には強制退院となりました。

 (症例5) 20年来教職にある40代の小学校の女性教師が、ある日、数百円の食べ物の万引をしました。直ちに、担任を降ろされ、退職処分になりましたが、それからも万引は止まらず、7年間に10回以上、取り押さえられ、治療を求めてホスピタルを受診しました。初回の万引の1年前、交通事故に遭って半年以上後遺症に苦しんだことが万引に関係している可能性がありますが、頭部CT検査では異常はなく、証明はできません。

 (症例6) 20代の医療関係技術者(女性)は、思春期に万引で2回つかまったことがありましたが、その後も時々万引を続けていました。ある日、スーパーマーケットで数千円の万引をして、警察に突き出されました。職場に知られることを恥じた女性は、自室に隠れてカッターで首と手を深く切りつけました。救急車でICUに運ばれた患者は、出血多量で瀕死の状態でした。3日間意識が戻らず、輸血を受けながら生死の境をさまよいましたがようやく回復に向かいました。患者は、過食症を家族にも友人にも隠していました。この事件をきっかけに、家族が治療に協力するようになりました。その後の治療で、患者は目覚ましい回復をみせ、2年後に完全な社会復帰を果たしました。さらに1年以上経過しましたが、摂食障害の症状(過食・嘔吐)もほとんどなく、万引衝動はまったくありません。

 (症例7) 20代後半の女性OLは、外資系会社で有能な秘書として勤務していました。一方で、対人関係のストレスから、20代前半から軽度の摂食障害があり、精神科に通院していました。そして処方薬をしばしばOD(まとめ飲み)していました。万引をしたことは一度もありませんでした。ところがある日、抗うつ薬や抗不安薬を数日分ODした後、不思議な行動にでました。「連続万引発作」とでも言うべきものです。分かっているだけで10ヵ所以上の店をはしごしながら、3日間万引をし続けたのです。しかもその間に2回捕まり、警察に突き出されたのですが、釈放されたその足で万引行脚をつづけました。盗んだものは、化粧品や衣類、食品など必要のないものばかり数十点です。時には、店を出てすぐに盗品をゴミ箱に捨て、次の店に万引に入りました。3回目に逮捕され、そのまま勾留されました。万引の記憶はありますが、ほとんど何も考えていなかった、と患者は言います。後で分かったことですが、女性は、酒害家庭で育ち、幼児期に虐待を受けていました。処方薬ODによって誘発された解離状態での犯行であった可能性があると思われますが、それを証明することは困難です。

 (症例8) 10年間、断続的にうつ病の治療を受けていた40代の女性が、ある時、リタリン3錠を処方されました。抑うつ気分には著効がありましたが、たちまちリタリンに依存し始め、半年以内に1日6錠服用するようになりました。リタリン4錠服用し始めた頃から、化粧品や衣類、バッグや家庭用品、食品など何でも万引きするようになりました。あまり必要でないものまで、ただスリルを楽しむためだけに万引をしているようにも思われました。治療によってリタリン乱用をやめたら、万引衝動もピタリと止まりました。(リタリン乱用に関連している可能性の高い万引症例を2例経験しています。05/12)

 (症例9) 55歳まで全く犯罪歴のなかった主婦が、2回の交通事故被害、予期せぬ家族との別れ、犯罪被害など立て続けの不幸な出来事の後、万引を繰り返すようになりました。執行猶予中の再犯のために1年半の懲役判決が出た後に、家族が赤城高原ホスピタルの記事を見つけ、患者が治療のために来院しました。50代後半の女性は、明らかなうつ病でした。数ヵ月間の治療後、上告審の判決がありましたが、結果は控訴棄却でした。

 (症例10) 20代後半の摂食障害+アルコール薬物依存症女性は、繰り返す万引のために、2年半の実刑になりました。刑期を終えて出所しましたが、すぐに過食嘔吐と万引が再発し、赤城高原ホスピタルに入院になりました。ミーティングに積極的に参加し、アルコール・薬物問題と万引はストップ、摂食障害も症状軽減して退院しました。2年後の現在も再発が見られません。[TOP]



【病院内 万引・窃盗ミーティングのお知らせ】 

2007年12月現在、毎朝8:45-9:00と毎週、水曜日と土曜日、午前 10:00−11:30、赤城高原ホスピタルでミーティングを行なっています。

クルーズドミーティングなので、万引、盗癖の問題に悩んでいる本人だけしか出席できません。
今のところ、あらかじめ当院で診断を受け、担当医から出席を勧められた外来、入院患者しか出席できません。

毎週、水曜日午前10:00-11:30の万引・盗癖ミーティングは、回復者による本人向けメッセージミーティングです。
また毎週、水曜日午後3:00-4:00には、回復者から万引・窃盗癖者の家族に向けてのメッセージ・ミーティングがあります。

病院内の万引・窃盗問題ミーティング(MTM)の詳しい情報はこちら→[万引・盗癖ミーティング]
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【赤城高原ホスピタルでの万引・窃盗癖の治療】 

 赤城高原ホスピタルでは、アルコール症関連嗜癖問題としての「窃盗癖」の相談、治療を行なっています。通常は、本人が治療につながる前から、家族相談、家族への教育、家族療法、初期介入 などが必要になります。本人、家族ともアルコール問題が全くない方の入院治療は原則としてできません。

 実際には、アルコール依存症よりは、摂食障害(とくに過食症)を合併した万引が多いようです。

 治療としては、教育、カウンセリング、自助グループなどが有効です。自助グループというのは、同じ悩みや病気を持つ人々の相互援助のグループです。窃盗癖に関しては、現在東京や関西地域で自助グループが活動しています。→[クレプトマニアの自助グループについて]

 赤城高原ホスピタルにおける窃盗癖入院患者の治療ですが、以下のような点に気をつけています。

◆道徳的非難をせず、病気として扱う。一方で、病気を免罪符とはしない。
◆警察や検察からの問い合わせ、意見書作成に当たっては、患者本人にとって不利なことも含めて事実をありのままに報告する、一部の事実を隠したりしないと患者本人と家族(時には弁護士を含め)に宣言しておく。
◆協力可能な家族、親族の全員で過去の犯罪歴と窃盗癖治療中であるという事実を共有するように勧める。
◆尻拭いをせず、本人に責任を取らせる。
◆具体的には、露見した万引、盗癖については、被害者が気付いていない場合でも報告し、弁償させ、謝罪させる。
◆病院以外の場所での窃盗犯行なら、本人の謝罪にケースワーカーとナース(通常2名以上)を付き添わせる。時には家族も付き添わさせる。本人に書かせた謝罪文を提出させる。
◆毎日、所持品、所持金検査を行い、その間隔を2日に1度、週に3回、週に2回、週に1度、2週に1度、月に1度といったように変える。万引や盗みの犯行があれば、毎日検査からやりなおし。
◆小さな嘘や規則違反、食品、物品の溜め込み、病院備品の持ち出しなどを、窃盗癖関連行為として、徹底して指摘、摘発する。
◆自助グループのミーティングで、自己紹介の時、「アルコール乱用、摂食障害、盗癖の○○です」と報告させる。
◆正直な犯行のレポートを書かせる。犯行後の自助グループでそれを読み上げさせる。
◆被害者との面接を仲介する。主治医の前で、被害者の気持を話させ、それを加害者が聞く。加害者が謝る。
◆ミーティングだけでなく、初対面の自己紹介でも、「盗癖」の説明をさせる。
◆嗜癖関係の大きなセミナーで話させる。ある患者は、200人の聴衆の前で、自分の盗癖の体験談を話した。
◆万引・窃盗ミーティングに出席させる。
◆回復した(あるいは回復途上の)窃盗癖の人に合わせる。
◆家族療法的アプローチ、認知行動療法など、嗜癖一般の治療。
◆薬物治療:抗うつ薬など投与することもあるが、むしろ他の医療機関で処方されていた余計な処方を漸減中止するケースが多い。

 治療成績ですが、過食症に合併した軽度の盗癖は、摂食障害の回復と共になくなるようです。
 万引症状のひどい方は、自己退院されることが多いようです。強制退院になる人もいます。万引だけでなく、盗癖がひどい方は、入院という共同生活を維持してゆくことは困難で、いずれ自己退院するか、強制退院になることが多いようです。ただし、かなりひどい万引・窃盗癖の方で、上記のような治療で回復された方もいます。

 摂食障害者の盗癖は、一般の方が予想する以上に多く、当院入院の摂食障害患者(重症の方が多い)では、少なくとも3割位にあるようです。また一方、入院治療中には盗癖を疑われることもなかった患者が、回復して数年後に、入院中の万引、盗癖をわれわれに打ち明けることがあり、驚かされることが何度かありました。

 アメリカの代表的な精神科教科書の簡略版、カプラン臨床精神医学ハンドブック―DSM‐IV‐TR診断基準による診療の手引(06/02/15確認)
の神経性大食症(bulimia nervosa)の項にも、「約1/3 の患者が万引をする」と書かれています。

 院内、院外の万引・盗癖問題自助グループが定着してきてからは、万引の回復率に改善傾向が見られます。とくに院外自助グループへの参加者には回復者が増えてきています。(この情報は、06/02/15追加)[TOP]



【文献に見る万引・窃盗癖の治療】 

参考資料は極めて限られています。認知行動療法が有効であったという報告が有る一方で、2ヵ月の治療と6ヵ月程度の経過観察では、治療効果が確認できなかった、という報告もあります。

薬物療法では、SSRIやナルトレキソン、トピラメートが有効であったという報告がありますが、これらはいずれも、オープントライアルです。薬物効果検定の標準とされる二重盲検の報告はほとんどありません。また、報告のほとんどがイスラエルの研究グループによるものです。

2009年、ナルトレキソンによるクレプトマニア治療に関して二重盲検の報告がありました。

うつ病のSSRIによる治療中にクレプトマニア様の行動が見られたという報告があります。筆者も経験しています。SSRIの"actibation syndrome"(賦活症候群)の一症状として窃盗行為が見られるようです。

この項目に関しては、このページの下方にある文献紹介を参考にしてください。[TOP]



【万引・窃盗癖の治療施設】 

 この数年(2003-2010年)、万引・盗癖の治療をしている病院や相談所を紹介してほしい、というメールを多数いただいています。私の知る限りでは、この問題に関心を持って実際に相談を受け付けている治療施設は、日本にはほとんどありません。そのためか、積極的に受け付けているわけではありませんが、赤城高原ホスピタル、および京橋メンタルクリニックでは、万引・盗癖問題のご相談が増えています。ここでは、自助グループやカウンセリングのご紹介、家族のカウンセリングや、適応がある場合には本人の入院治療のご紹介などを行っています。必要に応じて、裁判所に提出するための「意見書」を書くこともあります。

 2008年1月−2015年2月に、万引・窃盗関連問題で赤城高原ホスピタルと京橋メンタルクリニック(旧、外苑神経科)にてご相談や診療をされた方は合計約1150名です。一部のデータは、第19回日本嗜癖行動学会(2008年11月28日,29日、東京・池袋)、第20回日本嗜癖行動学会(2009年11月7日,8日、福島県「コラッセふくしま」)、第14回日本摂食障害学会(2010年10月2日,3日、東京都、政策研究大学院大学)、第20回日本嗜癖行動学会(2009年11月7日,8日、福島県「コラッセふくしま」)、第21回日本嗜癖行動学会(2010年、岡山県)、第22回日本嗜癖行動学会(2011年、大分県)、第23回日本嗜癖行動学会(2012年、秋田県)、第24回日本嗜癖行動学会(2013年11月2,3日、群馬県高崎市、高崎市総合保健センター)、第110回日本精神神経学会学術総会(2014年6月27日)、第16回国際嗜癖医学会年次学術総会(ISAM 2014)(2014年10月5日、パシフィコ横浜)、第25回日本嗜癖行動学会(2015年、鳥取県)などで報告しました。



【窃盗常習者の治療経過と治療効果】 


窃盗常習者の治療経過と治療効果に関して、私たちの経験では、

治療継続を指示した患者のうち、消息不明者を含め、8割程度が、3ヵ月以内に治療からドロップアウトし、そのほとんど(おそらく8割以上)が2年以内に再犯してしまいます。

3ヵ月以上の治療継続者でも、治療中に、3割程度が窃盗(多くは万引き)再犯します。

私の場合、治療開始後は、全ての窃盗行為の報告と、返済弁償が、治療継続の条件です。

想像では、正直な報告者は、治療に残り、いずれ回復します。不正直な患者は、多分、治療から脱落し、再犯を続け、いずれ検挙されます。

そして、1年以上治療を継続した患者の大部分が、最終的には窃盗を止めます。

治療中の万引き再犯者でも、返済を3‐5回すると、ほとんどの患者が窃盗を止めます。

以上、治療成果の概略です。



【万引・窃盗癖の裁判と治療】 移動しました。 → 「窃盗癖と法律問題」



【リンク】 

2011年4月、KA横浜が、スタートしました。→ KA横浜関連情報はこちら 


クレプトマニアBBS http://8508.teacup.com/akaruihoue/bbs(08/11/20 確認) クレプトマニア本人、家族、関係者のための掲示板。

クレプトマニア,家族と友人のための掲示板 http://8713.teacup.com/teturu/bbs(08/11/20 確認) クレプトマニア(万引・窃盗癖)を持つ方の家族と友人が発言する掲示板

X クレプトマニア掲示板 http://8606.teacup.com/chaps/bbs(05/07/10確認)  旧掲示板(廃止)。03/09から閉鎖中でしたが、04/02/18から再開されました。→06/10/10現在、掲示板が荒れていて、管理不十分の状態が続いているため、有志が、同様の新サイト、クレプトマニアBBSを発足されました。この種のサイトでは、嫌がらせメール、迷惑メールが多いので、管理人さんは大変かも知れませんが、こまめに雑草狩りをしてほしいと思います。クレプトマニア掲示板過去ログ  2002年6月から2003年3月までの上記掲示板過去ログです。

Welcome to the National Association for Shoplifting Prevention(英文、05/07/10確認) アメリカで活動する全国万引防止協会


【文献紹介】別ページに移動しました(2013/02/15)


[当院サイト内の関連事項]

クレプトマニアの自助グループ、KAの誕生と成長について(プリント用お知らせ) 
クレプトマニアの自助グループ・KA世田谷 基本情報
クレプトマニアの自助グループ・KAぐんま 基本情報 
クレプトマニアの自助グループ・KAなら、KAひょうご 

クレプトマニア本人からのSOS 
嗜癖問題Q&A: 万引、盗癖 
万引き・盗癖の自助グループについて(文献)
窃盗癖、回復者と回復途上者からのメッセージ 
窃盗癖患者、闘病日記 その1 
窃盗癖患者、闘病日記 その2 
クレプトマニア チェックリスト 
万引き・窃盗を止めるための具体策


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または、昼間の時間帯に、当院PSW(精神科ソーシャルワーカー)にお電話してください。

AKH 文責:竹村道夫(2000/7) 


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