【窃盗癖 (Kleptomania ) 】 
(改訂 09/10/21)
【窃盗癖、盗癖】
「窃盗癖(Kleptomania)」は、DSM-IV(アメリカの精神疾患診断、統計マニュアル)では、「他のどこにも分類されない衝動制御の障害」の章に分類されています。この章に含まれる他の疾患は、間歇性爆発性障害、放火癖、病的賭博、抜毛癖、特定不能の衝動制御の障害です。「Kleptomania」の訳語として「窃盗癖」が選ばれていますが、他にも、「盗癖」、「病的窃盗癖」などの訳語が可能だと思います。
【DSM−Wによる窃盗癖の診断基準】
DSM-IVの診断基準は、以下の5項目から成ります。
A.個人的に用いるのでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
B.窃盗におよぶ直前の緊張の高まり。
C.窃盗を犯すときの快感、満足、または解放感。
D.盗みは怒りまたは報復を表現するためのものでもなく、妄想または幻覚に反応したものでもない。
E.盗みは、行為障害、躁病エピソード、または反社会性人格障害ではうまく説明されない。
筆者の個人的意見を言えば、診断基準Aを厳格に適用すると、該当する患者はほとんどいなくなることでしょう。基準Aの表現はもっとゆるやかにすべきだと思います。所有欲や、経済的欲求からでは、窃盗の量や、回数、処罰による社会的評価の失墜、反省と窃盗行為の繰り返し、などが説明できないとき、あるいは、明らかに割りの合わない窃盗行為を繰り返している場合は、診断基準Aに適合すると考えるべきでしょう。
【窃盗 とアルコール症、摂食障害】
アルコール依存症の人が飲酒欲求をコントロールできないように、病的盗癖者は、窃盗行為への衝動、欲望、誘惑に抵抗することができません。アルコール依存症と同様に窃盗癖にも嗜癖性の病気としての側面があります。抑制不能な強迫的行為、問題の否認、家族を巻込むという点では、アルコール症と同じです。実際にアルコール症と窃盗癖の両方の問題を持っている患者さんは少なくありません。ただ実際の臨床場面では、アルコール症よりも、摂食障害、とくに過食症の方で、窃盗癖を合併する方が目立つようです。
【行動プロセスへの嗜癖】
アルコールと薬物、食物摂取への嗜癖をまとめて「物質嗜癖」と呼び、病的賭博(ギャンブル癖)、借金癖、窃盗癖、買物依存症、ワーカホリック(仕事中毒)などは「行動プロセス」への嗜癖、さらに恋愛依存、セックス依存、暴力的人間関係、共依存などは「人間関係」への嗜癖と呼ばれます。
【有病率、男女比】
窃盗癖はまれな疾患で、見つけられた万引者の5%以下でしかないようです。男性より女性に多いようです。
【窃盗癖関連問題】
窃盗癖が続くと、法律的問題、信用の失墜、対人関係の悪化、家庭崩壊、失業などのトラブルに巻込まれます。
【窃盗癖に合併して見られやすい精神障害】
気分障害(とくに、大うつ病性障害)、不安障害、摂食障害(とくに、過食症)、および人格障害が窃盗癖に伴ってみられることがあります。
【過食症における、万引の動機】
どうして、摂食障害(とくに、過食症)に万引が合併しやすいか、詳しいことは分かっていません。心理機制としては、衝動制御の障害に加えて、ある種の歪んだ復讐感、むちゃ食いを自己弁護的に代償する行為(タダだから食べ吐きしてよい?どうせ吐く食べ物のためにお金を払うのはばかげている?)、ある種の達成感を得るための行動、などがありうるでしょう。これらに加えて、飢餓状態における精神機能不全、しばしば合併する感情障害(うつ状態、軽躁状態、まれに躁状態)、人格障害、解離症状、使用薬物(処方薬、市販薬、乱用薬物)や飲酒の影響、思春期、青年期の衝動性、社会文化的傾向などが複雑に絡み合っていると考えられます。[TOP]
【窃盗癖の症例】
(症例1) 会社員の妻で、中年女性。中学校時代からの万引常習犯で、万引以外にも、職場や公共の場での金品の窃盗癖がありました。また、幸せそうな女性を見るとバッグや化粧品を隠したり、ゴミ箱に捨てるなどの反社会的傾向がありました。万引、盗癖で10回位捕まり、5度目には警察の家宅捜索でブランドもののハンドバッグが100個も押し入れから見つかり、懲役1年の実刑となりました。出所してすぐに万引をして捕まり、精神科的治療を勧められました。治療開始後1年あまりで、かなりの改善がみられたが、完治を確認しないまま、通院しなくなりました。3年後に、通院をやめて7ヵ月後に万引のため逮捕勾留され、2年間の服役をして出所したと報告がありました。面目なくて、治療していたことを取調べで言わなかったとのことです。
(症例2) 20代女性。摂食障害で、過食と自発的嘔吐がありました。最初は過食用の食物を万引していましたが、そのうちに衣類、装飾品など手当たり次第に万引するようになりました。摂食障害よりも、窃盗癖の方が家族の悩みの種になりました。入院を繰り返したが、病院内での盗食や窃盗などのため、どこでも強制退院になりました。(同様の例-摂食障害に合併する万引、盗癖例-は多数あります)
(症例3) 30代男性。自営業経営者の3男として生まれました。大学卒業後就職したが、ある日突然、職場の金を持ちだし、放浪することを数年ごとに繰り返しました。時には、フーグ(解離性遁走)のように一過性の記憶障害があるように見えました。その度に家族に迷惑をかけ、反省するが、窃盗癖は止まりませんでした。アルコール依存症を合併していました。
(症例4) ACOA(父親がアルコール症)。思春期から過食症が続いている中年女性。20代から万引常習犯で、職場での盗癖もあり、2年半の実刑判決を受けました。刑務所内でも、盗癖が止まらず、時々懲罰を受けました。出所後も盗癖が続きましたが、関係者も病気と見なし、再逮捕より精神科治療を勧めました。しかし入院中も万引、盗癖を繰り返し、最終的には強制退院となりました。
(症例5) 20年来教職にある40代の小学校の女性教師が、ある日、数百円の食べ物の万引をしました。直ちに、担任を降ろされ、退職処分になりましたが、それからも万引は止まらず、7年間に10回以上、取り押さえられ、治療を求めてホスピタルを受診しました。初回の万引の1年前、交通事故に遭って半年以上後遺症に苦しんだことが万引に関係している可能性がありますが、頭部CT検査では異常はなく、証明はできません。
(症例6) 20代の医療関係技術者(女性)は、思春期に万引で2回つかまったことがありましたが、その後も時々万引を続けていました。ある日、スーパーマーケットで数千円の万引をして、警察に突き出されました。職場に知られることを恥じた女性は、自室に隠れてカッターで首と手を深く切りつけました。救急車でICUに運ばれた患者は、出血多量で瀕死の状態でした。3日間意識が戻らず、輸血を受けながら生死の境をさまよいましたがようやく回復に向かいました。患者は、過食症を家族にも友人にも隠していました。この事件をきっかけに、家族が治療に協力するようになりました。その後の治療で、患者は目覚ましい回復をみせ、2年後に完全な社会復帰を果たしました。さらに1年以上経過しましたが、摂食障害の症状(過食・嘔吐)もほとんどなく、万引衝動はまったくありません。
(症例7) 20代後半の女性OLは、外資系会社で有能な秘書として勤務していました。一方で、対人関係のストレスから、20代前半から軽度の摂食障害があり、精神科に通院していました。そして処方薬をしばしばOD(まとめ飲み)していました。万引をしたことは一度もありませんでした。ところがある日、抗うつ薬や抗不安薬を数日分ODした後、不思議な行動にでました。「連続万引発作」とでも言うべきものです。分かっているだけで10ヵ所以上の店をはしごしながら、3日間万引をし続けたのです。しかもその間に2回捕まり、警察に突き出されたのですが、釈放されたその足で万引行脚をつづけました。盗んだものは、化粧品や衣類、食品など必要のないものばかり数十点です。時には、店を出てすぐに盗品をゴミ箱に捨て、次の店に万引に入りました。3回目に逮捕され、そのまま勾留されました。万引の記憶はありますが、ほとんど何も考えていなかった、と患者は言います。後で分かったことですが、女性は、酒害家庭で育ち、幼児期に虐待を受けていました。処方薬ODによって誘発された解離状態での犯行であった可能性があると思われますが、それを証明することは困難です。
(症例8) 10年間、断続的にうつ病の治療を受けていた40代の女性が、ある時、リタリン3錠を処方されました。抑うつ気分には著効がありましたが、たちまちリタリンに依存し始め、半年以内に1日6錠服用するようになりました。リタリン4錠服用し始めた頃から、化粧品や衣類、バッグや家庭用品、食品など何でも万引きするようになりました。あまり必要でないものまで、ただスリルを楽しむためだけに万引をしているようにも思われました。治療によってリタリン乱用をやめたら、万引衝動もピタリと止まりました。(リタリン乱用に関連している可能性の高い万引症例を2例経験しています。05/12)
(症例9) 55歳まで全く犯罪歴のなかった主婦が、2回の交通事故被害、予期せぬ家族との別れ、犯罪被害など立て続けの不幸な出来事の後、万引を繰り返すようになりました。執行猶予中の再犯のために1年半の懲役判決が出た後に、家族が赤城高原ホスピタルの記事を見つけ、患者が治療のために来院しました。50代後半の女性は、明らかなうつ病でした。数ヵ月間の治療後、上告審の判決がありましたが、結果は控訴棄却でした。
(症例10) 20代後半の摂食障害+アルコール薬物依存症女性は、繰り返す万引のために、2年半の実刑になりました。刑期を終えて出所しましたが、すぐに過食嘔吐と万引が再発し、赤城高原ホスピタルに入院になりました。ミーティングに積極的に参加し、アルコール・薬物問題と万引はストップ、摂食障害も症状軽減して退院しました。2年後の現在も再発が見られません。[TOP]
【病院内 万引・窃盗ミーティングのお知らせ】
2007年12月現在、毎朝8:45-9:00と毎週、水曜日と土曜日、午前 10:00−11:30、赤城高原ホスピタルでミーティングを行なっています。
クルーズドミーティングなので、万引、盗癖の問題に悩んでいる本人だけしか出席できません。
今のところ、あらかじめ当院で診断を受け、担当医から出席を勧められた外来、入院患者しか出席できません。
月に2回、第2、第4水曜日午前10:00-11:30の万引・盗癖ミーティングは、回復者による本人向けメッセージミーティングです。
また、第2、第4水曜日午後3:00-4:00には、回復者から万引・窃盗癖者の家族に向けてのメッセージ・ミーティングがあります。
病院内の万引・窃盗問題ミーティング(MTM)の詳しい情報はこちら→[万引・盗癖ミーティング]
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【赤城高原ホスピタルでの万引・窃盗癖の治療】
赤城高原ホスピタルでは、アルコール症関連嗜癖問題としての「窃盗癖」の相談、治療を行なっています。通常は、本人が治療につながる前から、家族相談、家族への教育、家族療法、初期介入
などが必要になります。本人、家族ともアルコール問題が全くない方の入院治療は原則としてできません。
実際には、アルコール依存症よりは、摂食障害(とくに過食症)に合併した万引が多いようです。
治療としては、教育、カウンセリング、自助グループなどが有効です。自助グループというのは、同じ悩みや病気を持つ人々の相互援助のグループです。窃盗癖に関しては、現在東京でで2つのグループが自立して活動しています。→[クレプトマニアの自助グループについて]
赤城高原ホスピタルにおける窃盗癖入院患者の治療ですが、以下のような点に気をつけています。
◆道徳的非難をせず、病気として扱うこと。一方で、病気を免罪符とはしない。
◆尻拭いをせず、本人に責任を取らせること。具体的には、露見した万引、盗癖については弁償させ、謝罪させる。病院以外の場所での犯行なら、ケースワーカーかナースを付き添わせる。
◆毎日、所持品、所持金検査を行い、その間隔を2日に1度、週に3回、週に2回、週に1度、2週に1度、月に1度といったように変える。万引や盗みの犯行があれば、毎日検査からやりなおし。
◆自助グループのミーティングで、自己紹介の時、「アルコール乱用、摂食障害、盗癖の○○です」と報告させる。
◆正直な犯行のレポートを書かせる。犯行後の自助グループでそれを読み上げさせる。
◆被害者との面接を仲介する。主治医の前で、被害者の気持を話させ、それを加害者が聞く。加害者が謝る。
◆ミーティングだけでなく、初対面の自己紹介でも、「盗癖」の説明をさせる。
◆嗜癖関係の大きなセミナーで話させる。ある患者は、200人の聴衆の前で、自分の盗癖の体験談を話した。
◆万引・窃盗ミーティングに出席させる。
◆回復した(あるいは回復途上の)窃盗癖の人に合わせる。
◆家族療法的アプローチ、認知行動療法など、嗜癖一般の治療。
◆薬物治療:抗うつ薬など
治療成績ですが、過食症に合併した軽度の盗癖は、摂食障害の回復と共になくなるようです。
万引症状のひどい方は、自己退院されることが多いようです。強制退院になる人もいます。万引だけでなく、盗癖がひどい方は、入院という共同生活を維持してゆくことは困難で、いずれ自己退院するか、強制退院になることが多いようです。ただし、かなりひどい万引・窃盗癖の方で、上記のような治療で回復された方もいます。
摂食障害者の盗癖は、一般の方が予想する以上に多く、当院入院の摂食障害患者(重症の方が多い)では、少なくとも3割位にあるようです。また一方、入院治療中には盗癖を疑われることもなかった患者が、回復して数年後に、入院中の万引、盗癖をわれわれに打ち明けることがあり、驚かされることが何度かありました。
アメリカの代表的な精神科教科書の簡略版、カプラン臨床精神医学ハンドブック―DSM‐IV‐TR診断基準による診療の手引(06/02/15確認)
の神経性大食症(bulimia nervosa)の項にも、「約1/3 の患者が万引をする」と書かれています。
院内、院外の万引・盗癖問題自助グループが定着してきてからは、万引の回復率に改善傾向が見られます。とくに院外自助グループへの参加者には回復者が増えてきています。(この情報は、06/02/15追加)[TOP]
【文献に見る万引・窃盗癖の治療】
参考資料は極めて限られています。認知行動療法が有効であったという報告が有る一方で、2ヵ月の治療と6ヵ月程度の経過観察では、治療効果が確認できなかった、という報告もあります。
薬物療法では、SSRIやナルトレキセン、トピラメートが有効であったという報告がありますが、これらはいずれも、オープントライアルです。薬物効果検定の標準とされる二重盲検の報告はありません。また、報告のほとんどがイスラエルの研究グループによるものです。
うつ病のSSRIによる治療中にクレプトマニア様の行動が見られたという報告があります。
この項目に関しては、このページの下方にある文献紹介を参考にしてください。[TOP]
【万引・窃盗癖の治療施設】
この数年(2003-2008年)、万引・盗癖の治療をしている病院や相談所を紹介してほしい、というメールを多数いただいています。私の知る限りでは、この問題に関心を持って実際に相談を受け付けている治療施設は、日本にはほとんどありません。そのためか、積極的に受け付けているわけではありませんが、赤城高原ホスピタル、および外苑神経科では、万引・盗癖問題のご相談が増えています。ここでは、自助グループやカウンセリングのご紹介、家族のカウンセリングや、適応がある場合には本人の入院治療のご紹介などを行っています。必要に応じて、裁判所に提出するための「意見書」を書くこともあります。
2008年に、万引・窃盗関連問題で赤城高原ホスピタルと外苑神経科にてご相談や診療をされた方は合計約100名です。一部のデータは、第19回日本嗜癖行動学会(2008年11月28日、29日、東京・池袋)にて報告しました。
【万引・窃盗癖の裁判と治療】
2003年頃から、万引に関連して、警察による本人の逮捕勾留や裁判中のケース、執行猶予や実刑判決が出た方のご相談を受けることが多くなりました。そのような裁判がかかわる多くの患者さん方を治療してみて、以下のようなことに気がつきました。
1.他の嗜癖問題と同様に、万引・窃盗癖の治療には時間がかかり、失敗がつきもの。しかし回復は可能。
2.明らかな摂食障害や物質使用障害、うつ病などの合併が見られる場合は、そうでない場合より予後良好。
3.治療中のスリップ(万引再犯)は、裁判進行中では最悪の事態であるが、これがかなり多い。
4.本人とご家族が治療に積極的で、誠実に治療者の指示に従う場合は、回復率が高い。
5.初犯であれば、専門家の治療が行なわれていることが分かれば、不起訴になる可能性が高い。
6.治療からドロップアウトした患者の予後は極めて悪い。再犯の可能性が大。(警察から問い合わせがあるのでわかる)。
7.執行猶予中の再犯でも、誠実に治療に取り組み、治療効果があると裁判官に認められれば、実刑を免れることがある。
8.専門治療は、起訴前にスタートするのがベスト。専門治療と有能な弁護士の援助があれば、不起訴になることが多い。
9.実刑判決が出た後に、治療をスタートして、控訴審でこの判決を覆すことはきわめて困難。
10.病的な万引ケースであることが明らかである場合は、専門家の「意見書」が有効なことが多い。
11.真に万引・窃盗癖からの回復を願うというより、主に裁判対策のために受診治療を求めているように見えるケースは予後不良。
12.弁護士の能力、裁判官の裁量によって、判決はかなり変わりうるようにみえる。
13.万引常習犯の私選弁護士による弁護費用は最低でも50万円以上プラス実費、80万円以上になることもある。。
14.最近、罰金刑が増えており、万引常習者の場合、高々数千円商品の万引の罰金が20−50万円。
15.医療費やカウンセリング料は、勾留や、弁護、罰金、実刑などに費やす心理的、経済的負担に比べると安い、と思います。
(この項目、07/12/20追加、08/10/27、08/11/11改訂)
【リンク】
クレプトマニアBBS http://8508.teacup.com/akaruihoue/bbs(08/11/20 確認) クレプトマニア本人、家族、関係者のための掲示板。
クレプトマニア,家族と友人のための掲示板 http://8713.teacup.com/teturu/bbs(08/11/20
確認) クレプトマニア(万引・窃盗癖)を持つ方の家族と友人が発言する掲示板
X クレプトマニア掲示板 http://8606.teacup.com/chaps/bbs(05/07/10確認) 旧掲示板(廃止)。03/09から閉鎖中でしたが、04/02/18から再開されました。→06/10/10現在、掲示板が荒れていて、管理不十分の状態が続いているため、有志が、同様の新サイト、クレプトマニアBBSを発足されました。この種のサイトでは、嫌がらせメール、迷惑メールが多いので、管理人さんは大変かも知れませんが、こまめに雑草狩りをしてほしいと思います。クレプトマニア掲示板過去ログ 2002年6月から2003年3月までの上記掲示板過去ログです。
Welcome to the National Association for Shoplifting
Prevention(英文、05/07/10確認) アメリカで活動する全国万引防止協会
【文献紹介】(新しい文献を上にしました)
医学雑誌、「アディクションと家族」(季刊、2006年第3号、11月15日発行、家族機能研究所)は、「クレプトマニア」特集号です。
以下、内容概略です。
特集にあたって 斎藤 学 206
当事者との対談 聞き手/斎藤 学
├カバンの中が盗品でいっぱいだとすごい幸せ! L男さん 209
├友達のものを盗ってもシラッとしている自分がいた M子さん 218
└帰り道のコンビニで、パンやおにぎり100個ずつ盗った P子さん 225
摂食障害者のクレプトマニア 遠藤優子 232
万引き・盗癖の自助グループについて 竹村道夫 238
クレプトマニアについて−積極的養生のすすめ 永野 潔 244
クレプトマニアと罪悪感 斎藤 学 252 (各行末の数字は掲載ページ)
定価(税込)1,680円 です。購入については、株式会社IFFヘルスワーク協会出版部(03-5575-3764)にご相談ください。「クレプトマニア」に関する日本語の文献はほとんどないので、何かお役に立てるのではないかと思います。
カナダの摂食障害治療グループによる、(摂食障害+万引)患者の行動療法パイロットスタディの結果は以下のようなものでした。
6人の(摂食障害+万引)患者に、8週間の行動療法を行ない、治療前、治療終了時、1ヵ月後、6ヵ月後に評価をした。6人中3人のみが治療プログラムを終了した。全ての対象患者で、自己評価の向上と、万引衝動のコントロール能力の改善を認めたが、万引頻度の減少を報告したものは1人のみであった。行動療法がこの種の患者に有効である可能性あるが,より長期のセッションと長期のフォローが必要かもしれない。(2005)
Birmingham CL, Hlynsky J, Russell B, Gritzner S.: Pilot treatment program for shoplifting in eating disorders. Eat Weight Disord. 2005 Dec;10(4):e105-8.
21例のクレプトマニア患者とその一等親、57例について、いくつかの心理検査を行い、64例の対照群と比較したところ、クレプトマニア患者群とその一等親群には、感情障害、不安障害が有意に多かった。(2004 Israel)
Dannon PN, Lowengrub KM, Iancu I, Kotler M.: Kleptomania: comorbid psychiatric
diagnosis in patients and their families. Psychopathology. 2004 Mar-Apr;37(2):76-80.
トピラメート単独か、SSRIとの併用で、効果がみられた3例のクレプトマニア症例の報告。
(院長註)トパマックスは、日本では未発売のグルタミン酸拮抗薬。この薬剤は、片頭痛予防薬、抗てんかん薬として、アメリカで認可されている。日本では、現在、抗てんかん薬としての治験が進行中。さらにまだ研究段階だが、アルコール依存症治療薬、コカイン依存症治療薬、本態性振戦の治療薬、難治性双極性気分障害治療薬として、さらにダイエット剤としての可能性が有望視されている。(2003 Israel)
Dannon PN.: Topiramate for the treatment of kleptomania: a case series and review of the literature. Clin Neuropharmacol. 2003 Jan-Feb;26(1):1-4.
ナルトレキソン(naltrexone、アヘン受容体拮抗薬)が有効であったという思春期クレプトマニア症例の報告。(2002 USA)
Grant JE, Kim SW. : Adolescent kleptomania treated with naltrexone--a case report. Eur Child Adolesc Psychiatry. 2002 Apr;11(2):92-5.
クレプトマニアの治療としては、過去1世紀において、精神療法から精神薬物療法的介入への転換が見られる。認知行動療法に加えて、SSRIやそのほかの抗うつ薬、感情調整剤、オピオイド受容体アンタゴニスト(拮抗物質)などを用いた薬物療法が有望である。(2001 Israel)
Durst R, Katz G, Teitelbaum A, Zislin J, Dannon PN.: Kleptomania: diagnosis and treatment options. CNS Drugs. 2001;15(3):185-95.
精神療法に加えて、fluoxetineか paroxetine投与によって、効果があった5例を報告した。うち1例では、投薬中止によって、繰り返し盗みの再発が見られた。この所見は、クレプトマニアに対するSSRIの有効性を示すと共に、この疾患にはセロトニン系機構の機能不全との関連性があるという仮説を支持する。(1999 Israel)
Lepkifker E, Dannon PN, Ziv R, Iancu I, Horesh N, Kotler M.: The treatment of kleptomania with serotonin reuptake inhibitors. Clin Neuropharmacol. 1999 Jan-Feb;22(1):40-3.
DSM-IVの診断基準に合致する「純粋なクレプトマニア群」37名と捕まったばかりの一般的な万引者群、50名を比較し、計画性、心理的偏り、盗品の必要性などの点で、両群に差がなかった。僅かに、窃盗の実行前の緊張感と、実行後の開放感がクレプトマニア群で高かった。(1997)
院長コメント:DSM-IV では、あたかも純粋なクレプトマニアと一般的な万引の間には明瞭な区別があって、万引はありふれているが、純粋なクレプトマニアは極めて稀であるというように書かれていますが、このページの初めの方(診断基準の項目)に書いたように、私自身は、これに疑問を持っています。この文献も、そのことを裏付けているように思います。
Sarasalo E, Bergman B, Toth J.: Theft behaviour and its consequences among kleptomaniacs and shoplifters--a comparative study. Forensic Sci Int. 1997 May 5;86(3):193-205.
クレプトマニアにSSRIが有効であるとの最近の数件のレポートとは逆に、うつ病のSSRIによる治療中にクレプトマニア様の行動が見られた3症例を報告した。(1997
Israel)
Kindler S, Dannon PN, Iancu I, Sasson Y, Zohar J.: Emergence of kleptomania during treatment for depression with serotonin selective reuptake inhibitors. Clin Neuropharmacol. 1997 Apr;20(2):126-9.
過食症患者には、自己破壊的な嗜癖行動を伴うことが少なくないが、中でも、反復される窃盗と処方薬の過量服用は、重症度の指標となる嗜癖行動であり、これらが単独の随伴嗜癖行動であることは少ない。(1993)
Lacey JH.: Self-damaging and addictive behaviour in bulimia nervosa. A catchment area study. Br J Psychiatry. 1993 Aug;163:190-4.
過食症患者を窃盗を伴う群と、窃盗をしない郡に分けて比較したところ、窃盗群は、幼児期の対人関係が希薄で、性的に早熟な結果性活動が活発で違法薬物の使用頻度が高く、また、強迫的で、強迫行動を儀式化する傾向があった。(1992)
Rowston WM, Lacey JH.: Stealing in bulimia nervosa. Int J Soc Psychiatry. 1992 Winter;38(4):309-13.
過食症の万引者と過食症でない万引者を比較したところ、非過食症群のほうが、より早期に盗みを始め、過食症群より体重が多く、万引に関してより反社会的な理由をあげることが多かった。(1992)
Mitchell JE, Fletcher L, Gibeau L, Pyle RL, Eckert E.: Shoplifting in bulimia nervosa. Compr Psychiatry. 1992 Sep-Oct;33(5):342-5.
疫学的データはないが、盗み行為と摂食障害とには関係があり、とくに過食症患者の過食行動との関連性が強い。盗癖の存在は、摂食障害の重症度の指標となりうる。一般人における盗み行為の頻度に関するデータが少ないことは、この種の調査の困難さのひとつである。(1995)
Baum A, Goldner EM.: The relationship between stealing and eating disorders: a review. Harv Rev Psychiatry. 1995 Nov-Dec;3(4):210-21
20例の厳格に診断されたクレプトマニア症例について、本人に構造化面接を行い、その家族歴を聴取した。全てのクレプトマニア症例が大感情障害の、16例が不安障害の、12例が摂食障害の罹患歴があった。31%の症例で1等親に大感情障害が見られた。感情調整薬投与を受けた18例中10例で、盗み行為の改善傾向が見られた。これらの所見から、クレプトマニアは大感情障害に関連があるか、感情障害圏疾患であると考えられる。(1991 USA)
McElroy SL, Pope HG Jr, Hudson JI, Keck PE Jr, White KL: Kleptomania: a report of 20 cases. Am J Psychiatry. 1991 May;148(5):652-7.
クレプトマニア研究のレビュー。クレプトマニアは感情障害に関連があるか、感情障害圏疾患であろう。(1991 USA)
McElroy SL, Hudson JI, Pope HG, Keck PE.: Kleptomania: clinical characteristics and associated psychopathology. Psychol Med. 1991 Feb;21(1):93-108.[TOP]
【追加事項】
窃盗癖の一部を精神疾患とみなすからと言って、筆者は「万引・窃盗」の犯罪性を否定するものではありません。違法薬物の乱用と依存症、違法ギャンブル常習、家庭内暴力、放火癖などには、犯罪という側面と、嗜癖性精神障害としての側面があります。有効な問題解決や予防のためには、法的取り締まりだけではなく、嗜癖治療が欠かせません。
DSM-IV の日本語訳の本文中の各疾患名には参考原文対照として元の英語疾患名が出ていますが、その「窃盗癖」の元の英語疾患名、「Kleptomania」はミススペリングで、「Kleptmania」となっており、
o が脱落しています(医学書院、614ページ)。[TOP]
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文責:竹村道夫(2000/7)